新型コロナワクチン:接種するべきか?接種すべきでないか?

新型コロナワクチン:接種するべきか?接種すべきでないか?

ウイルスや細菌などに対して、人口の一定以上の割合が免疫を持つと、感染者が出ても、他の人への感染が減って、流行しなくなる「集団免疫」という状態になります。WHOは、集団免疫の状態になるためには、世界の人口の70%を超える人がワクチンを接種する必要がある、という見方を示しました。抗体検査の結果を見ると、昨年6月に行われた第1回調査では、東京都では0.10%、大阪府では0.17%、宮城県では0.13%でした。今回の第2回調査では、東京都では1.35%、大阪府では0.69%、宮城県では0.14%、愛知県0.71%、福岡県では0.42%であり、地域により最大10倍ほどの開きがありました。12月の時点では、人口の大半が、抗体を保有していないことが確認されました。WHOの言う70%には遥かに及びません。人口当たりの累積感染者数と比較してみますと、抗体保有者は、感染者数の2.5〜4.7倍に相当します。
現在日本で承認されたワクチンはファイザーのみで、モデルナとアストロゼネカが申請中、他の2社が治験中です。承認・申請中のワクチンの特徴を示します。ファイザーとモデルナは、mRNAワクチン、アストロゼネカはウイルスベクターワクチンです。ファイザーとモデルナの有効率は約95%、アストロゼネカは70%と少し落ちるようです。ファイザーは保存に-70℃の冷蔵庫が必要ですが、アストロゼネカは普通の冷蔵庫で大丈夫です。
mRNAワクチンの作用機序についてお話しします。ワクチンには、新型コロナウイルスの「スパイク蛋白」という、突起部分を作成するために必要な情報である、mRNAが入っています。mRNAはそのままでは生体内では直ぐに分解されてしまうので、脂質ナノ粒子の中に封入されています。これはポリエチレングリコールにより作られています。ポリエチレングリコールは、下剤、薬品の溶解液、化粧品などに使用されており、稀にアナフィラキシーを起こすことが知られています。
ワクチンを注射することで、ワクチン粒子が細胞内に取り込まれます。細胞質のリボソーム内で、mRNAが蛋白質に翻訳されて、ウイルススパイク蛋白が産生されます。
このスパイク蛋白が細胞膜から細胞外に出ると、免疫系がこれを抗原として認識して、免疫反応が誘発されます。mRNAは核内に侵入することは無く、人の遺伝情報であるDNAに影響を与えることはありません。
ワクチンの効果についてお話ししましょう。季節性のインフルエンザワクチンの有効率は、20〜60%と言われ、ワクチンを接種しても感染する人は大勢います。しかし、乳幼児と高齢者の入院率、重症化率を抑える効果は高いとされ、毎年秋になるとワクチン接種が勧められています。これに比べれば、新型コロナワクチンの効果は高く、アストロゼネカが70%、ファイザーが95%と高い有効率を示しています。
米国のファイザーmRNAワクチンの臨床試験の成績ですが、ワクチン接種2万人、プラセーボ2万人に接種後、約4ヶ月間、発症の頻度を比較しました。2回接種後、発症した人は、ワクチン群で8例、プラセーボ群162例でした。重症者は、ワクチン群で1例、プラセーボ群9例でした。この結果から、ワクチンの有効性は95%と算定され、重症化予防に役も立つということが判明しました。
ワクチン接種後いつから効果が現れるのか?ということは、この感染者の推移のグラフを見ると分かります。3週間空けて2回接種しています
1回目のワクチン接種から12日を経過すると、プラセーボとの間に、発症率の差が出てきます。
臨床試験の結果をまとめると、発症を95%抑制できるという結果です。市販後の初期接種者に対して、毎週PCR検査を実施し感染率を調べたところ、感染予防効果が90%という結果が出ました。重症化は1/9抑制可能でした。12〜15歳では発症を100%抑制可能であったと報告されています。
ワクチン効果持続期間に関しては、まだ分かっていませんが、モデルナは4ヶ月後に抗体を確認できた、ファイザーは6ヶ月後の有効性を確認したと報告しています。
ワクチンの効果と感染後の再感染率を比較すると意外な結果が出ました。
デンマークで、昨年春の第1波のPCR陽性率と、秋冬の第2波の感染率を比較して、感染後の再感染防御率は80%でした。このことから、感染した人よりもmRNAワクチン接種者の方が、予防効果が高いという結果が出ています。特に65歳以上の高齢者の再感染防御率は47%であり、高齢者に関しては感染した人であっても、ワクチン接種が望ましいと判断されています。
有害事象というのは、医薬品の使用によって生じた、あらゆる好ましくない有害な反応のことを指します。この中でワクチンの接種と因果関係があると判断されたものを、副反応と呼びます。世界的に見ても、ワクチン接種後に死亡した人は何人かいますが、ワクチン接種群とプラセーボ群とで、死亡率に差は無く、ワクチンの副反応により死亡したと断定された人は今のところ1人もいません。
しかし、アストロゼネカワクチンでは、接種2週間以内に、血小板の減少を伴う非常にまれな血栓の発生が、60歳以下の女性に多く報告されており、血栓による死亡例の報告があります。WHOは副反応とは認めていませんが、EUの医薬品規制当局はこの血栓症をまれな副反応とみなすべきとの見解を4月7日に示しました。血栓の頻度はアナフィラキシーよりも少なく、1800万人中30人なので100万人中1.7人ということになります。
副反応に関しては、やはり日本人のデータが気になります。2月17日より日本で始まった医療従事者の先行接種1万8千人の副反応データです。
発熱、倦怠感、頭脳などの全身症状が、1回目に比べて2回目に多く約6割に認められました。微熱は翌日がピークで3日目には解熱しています。
接種部位の局所の反応は、90%に認められており、季節性インフルエンザワクチンが40%であるのに対して、かなり頻度が高いことが明らかになりました。
埼玉県の新型コロナウイルスワクチンチームのパンフレットが見やすいので参考にしてください。局所症状が当日8〜9割出現し約2日持続、全身症状は翌日に6割出現し約1日持続します。
アナフィラキシーとは、急激に起こり全身に広がるアレルギー反応のことです。皮膚粘膜症状、消化器症状、呼吸器症状、循環器症状、脳神経症状などが現れ、重症化すると意識が無くなり、ショック状態となります。それをアナフィラキシーショック と呼びます。アナフィラキシーの90%は30分以内に現れます。アナフィラキシーは一時的な反応であり、適切な対応をすることで回復しますので、殆どの患者さんは入院せずに帰宅することが可能です。
米国のアナフィラキシー報告は100万回あたり4.7件と報告されています。
日本での先行接種医療従事者のアナフィラキシー報告は、100万回あたり81件と多く報告されています。米国でも医療従事者のアナフィラキシーの頻度は高く、医療従事者は、ポリエチレングリコールに感作されている人が多いのが原因ではないかと推測されています。
新型コロナウイルス では、感染を繰り返していくと、2週間に1カ所ほどのペースで、小さな変異が起こると言われています。変異が遺伝情報の重要な部分に起こると、ウイルスの性質が変わってしまいます。ウイルス表面のスパイク蛋白が変異した新型コロナウイルスが、イギリス、南アフリカ、ブラジルで増加し、従来のウイルス と置き換わっています。現在確認されている変異株の一覧ですが、今日本で流行している変異株は、イギリス株であり、感染力は30〜40%増加するもののワクチンの効果が低下する免疫逃避は無いと言われています。
ファイザーmRNAワクチンとアストロゼネカウイルスベクターワクチンの変異株に対する有効性の報告を比較して見ましょう。
ファイザーワクチンは、従来株、イギリス変異株、南アフリカ変異株に対して90%以上の有効性を確認したと発表しました。それに対してアストロゼネカワクチンは、従来株、イギリス変異株で70%、南アフリカ変異株で10%と有効性が低下したと発表しています。荊芥連翹湯を含め、抗ウイルス作用を期待されて使用されている薬剤は、スパイク蛋白をターゲットにしたものではないので、現在のようなタイプの変異株に対しての効果は、変わらないと考えています。
ワクチンを受けることに対してどう考えるか?というアンケート結果をお示しします。
強く希望する人27%、弱く希望する人47%で75%の人がワクチンを希望する姿勢を示しています。
そうした状況の中で、ワクチン接種率と、世界の感染者数と死亡者数を比較して見ましょう。ワクチン接種率ですが、中国は、100人中9.6回、イスラエルはイギリス変異株が流行しており、111.3回で国民の半数が接種したことになります。米国は、49.7回で国民の1/4が接種したことになります。日本はまだ0.9回です。感染者数ですが、
中国は感染者数が極めて低く保たれています。感染は人から人へと人を介して拡大します。全ての人がルールを守れば感染は必ず終息します。このデータがそれを物語っています。日本では感染拡大と縮小を繰り返しています。人の動きを制御できないからです。日本は民主国家ですので、違法ではないことに関しては、本人の良識に任されています。ルールを守らない一部の人間がいることで、行動制限を緩和すれば感染拡大が起こってしまうのです。中国は、人権を侵害してでも、国家権力で国民の行動を監視しているので、感染拡大が防止できています。日本政府はそこから多くを学ぶべきです。
ワクチンの問題点を整理しておきましょう。有効性に関しては、個人レベルでは極めて有用と考えられます。集団に関しては、未知です。そして、変異株、効果持続期間の問題が未知です。副反応に関しては、軽い副反応が高頻度で起こることは覚悟しなければなりません。アナフィラキシーなどの重篤な副反応は稀であり、解熱鎮痛剤や抗生剤に比べれば稀であり、適切な処置を施すことができれば、命に関わる問題にはなりません。2回目の方が、全身副反応が強く出ます。3回目は打ちたく無いと言う人もいます。持続期間と変異株の問題が解決しない限り、今後何回も接種しなければならなくなる可能性もあります。インフルエンザワクチンは、A型B型の数ある株の中から3株を選択して作られているので、3種類のインフルエンザ株に有効です。新型コロナワクチンも、いずれはいくつかの変異株に有効なワクチンが作られる日が来るかも知れません。早く接種して安心するのか?より幅広く有効なワクチン開発されるのを待つか?それは、とても判断に苦しむところです。
Dr.Yは2月から始まった医療従事者ワクチン先行接種は辞退しました。感染リスクが極めて低い生活の中で、個人的には接種する必要性を感じないからです。しかし、感染したら重症化しやすい、私の外来に通院している高齢の患者さんには、ワクチン接種を積極的にお勧めしています。
9000人以上が亡くなり、医療が逼迫し、経済的にも大きなダメージを受け、コロナによる失業者が10万人を超えています。政府の対策が如何に的を外れていようとも、ワクチン接種をすることで集団免疫が確立し、COVID-19が早期に終息することで、逼迫した経済や医療が早期に回復するのであれば、1人の国民としての義務を全うさなければならないと考えています。
しかし、2回までは我慢しますが3回4回ともなるとなかなか首を縦に振ることはできません。ワクチンの効果の持続期間が未知であり、変異ウイルスへの効果も未知であり、集団免疫が果たして確立するのか?その辺りの結論が出ないと、ワクチン接種には踏み切れないと考えています。ワクチンの効果の持続期間や変異ウイルスへの効果の成績を見守りながら、今年の秋頃に自分の順番が来た時点で、最も良いと思うワクチンを接種したいと考えています。
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